ビタミンAは脂溶性のビタミンであり、レチノールとカロテノイドの二種に分かれます。前者は主に肉類、魚類、卵など動物性食品に多く含まれ、後者は緑黄色野菜など植物性食品に多く含まれます。カロテンは実は数百種の種類がありますが、実際一般の方がよく知っているのはβカロテンでしょう。
ビタミンAの主な働きとしては粘膜の強化、がんや免疫の改善、老化防止、資料の強化、味覚聴覚機能へのサポートなどがあります。
脚気の予防で知られるようになったビタミンがビタミンB1。これは水溶性ビタミンです。いわゆる白米になったために脚気が軍隊内で増えたことがヒントだったとされています。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるための代表格であり、神経伝達や学習能力にもかかわってきます。ブドウ糖がミトコンドリアの中に入って活躍するために、違う言い方をすればブドウ糖をピルビン酸からアセチルCoAに変換する補酵素として、ビタミンB1は活躍します。
ビタミンB1が十分にあると神経細胞に発生する活動電位の立ち上がりが早くなるとされています。
ビタミンB2は物質や薬物の代謝に関係するとされています。私の仕事ではナイアシンと並んで結構重要なビタミンです。動脈硬化予防、成長ホルモン合成、トリプトファンからナイアシンに変換するときの手助けとして活躍します。不足すると光過敏症になりますが、これは精神薬の禁断症状の一つでもあります。
ビタミンB2はベジタリアン、抗生物質の長期投与、精神安定剤、ステロイドなどの長期投与、妊娠や授乳期などに減りやすいとされています。ビタミンB2が減ると光過敏症のほかに口の中の灼熱感、疼痛、舌のざらつき、口角炎、口唇などのぶつぶつ、体毛の喪失や禿頭などが出るとされていますが、これは精神薬の後遺症とかなり一致します。
ナイアシン(ビタミンB3)は人の体内に豊富に存在し、数百種類の補酵素として体内で機能します。ナイアシンには精神を鎮める作用や幻覚や幻聴を緩和する作用があるとされ、アルコールの代謝にも関係しています。二日酔いの原因物質の一つであるアセトアルデヒドの分解にも関係しており、めまいや偏頭痛にも関係しているとされています。ナイアシンは多量摂取によって胃の痛みや吐き気、下痢を引き起こすことがあります。
また同様にナイアシンフラッシュと呼ばれる状態をもたらしますが、ナイアシンフラッシュの不思議についてはなかなかほとんどの人が理解できません。ナイアシンフラッシュは単なるアレルギーやヒスタミンだけで片づけられる問題ではなさそうです。
パントテン酸はビタミンB5ともよばれ、精神に深く関係していると称される栄養素です。またこのビタミンも他同様に性ホルモン、アセチルコリン、副腎ホルモンなどの生合成を助ける作用があります。
パントテン酸は多くの食品に入っているので、あまり欠乏の心配はいらないと栄養書には書かれています。パントテン酸は食品加工、加熱に弱く、またカフェイン、サルファ剤、精神薬、アルコールなどによって損なわれてしまいます。また穀物の精製によっても半分近くの栄養素が失われてしまうといわれています。
ビタミンB6は特に皮膚にとって重要なビタミンです。マグネシウム、葉酸などとともに神経伝達物質の補酵素としても働くので、皮膚と新計量法に作用します。案の働きにも不可欠とされています。
アトピー性皮膚炎でもじんましんでも、精神状態と皮膚状態がリンクする人がいますが、そのような人は一般的に栄養状態に問題がある人が多いと思います。
ビタミンB6はそれ以外にも糖尿病の改善に役立ったり、赤血球の産生を促したり、免疫の正常化の作用があります。またグルタミンからGABAが作られる場合、ビタミンB6は補酵素として働きますので、ベンゾ系を飲んでいる人は着目したいビタミンです。
ビタミンB12は核酸の生合成に関係する重要なビタミンの一つです。ビタミンB12は動物性食品にほとんど含まれており、植物性食品では海苔にのみ含まれています。
ビタミンB12も赤血球再生、肝臓の保護などに役立ち、また薬としてはメチコバールとして糖尿病や手足のしびれに出されており、末梢神経障害などにも応用されます。
また胃切後の患者などでは胃の内因子が欠乏して貧血になることがあり(悪性貧血と呼ぶ)、胃の手術をしている人は気にするべきビタミンの一つです。ビタミンB12はカルシウムと同時に摂取することで効率よく吸収されるといわれます。また欠乏すると味覚障害、胎児の無脳症なども関係するとされています。
葉酸は緑黄色野菜から抽出されたビタミンで、DNA合成などに重要な役割を果たす栄養素です。肉、魚には含まれず野菜、豆、海藻類などに含まれます。
特に葉酸は妊婦が摂取すべきということで、一般の人でもなじみが深い栄養素でしょう。葉酸やビタミンB6、B12などが不足すると、高ホモシステイン血症をきたし、高脂血症、うつ、動脈硬化などのリスクが高まることが分かっています。
妊娠に関していえば葉酸の摂取不足が、胎児の発育や奇形などに影響を与えることが分かっています。またそれは妊娠早期に決定されてしまうので、妊娠が判明してから葉酸を摂取してもむしろ遅いといわれているようです。また切迫流産、死産、妊娠中毒症、早期胎盤剥離なども葉酸の不足が原因の一つといわれており、これらになるかならないかは運などの問題ではなく日ごろの努力が影響されたものなのです。
もっとも有名で大事なビタミンがビタミンCかもしれません。しかしこのビタミンCほどに嘘がはびこっている栄養素もないでしょう。
哺乳類の中でビタミンCを合成できないのは人間とサルくらいだそうです(ほかにも少しいますが)。
現代社会の中で食物のビタミンCは極度に低下してきています。最も普遍的なビタミンなのに、我々はビタミンCの摂取不足傾向にあるようです。ビタミンCには抗酸化作用、免疫活性、コラーゲンの生成、抗アレルギー効果、精神状態の改善、酵素の賦活、鉄の吸収を助ける、高コレステロールの抑制など様々な働きがあります。
ビタミンCが老化にも良いといわれる理由ですが、ビタミン飲料などは危険がいっぱい伴います。そもそも合成ビタミンCと天然ビタミンCはかなり違いますので、レモン何個分とか書いている商品は嘘だらけです。
ビタミン D といえば、骨を助けるビタミンとして有名であり、骨粗鬆症の予防に必要であることがよく知られています。
ただ、ビタミンDの働きはそれだけではなく、がんの予防や感染症の予防など様々なものに及ぶのです。ある研究では血中のビタミン D レベルが 10ng/ml 増加することで、すべての種類のガンについて -17% の罹患率となり、死亡率は -29%、消化器系に限れば -45% の罹患率になる。
ビタミン D の血中濃度が 20ng/ml 以上だった人は、それ以下だった人に比べて結腸ガンの割合が 1/3 に低下していた。同様の結果は、膵臓ガン、直腸ガン、結腸ガン、前立腺ガン、肺ガン、乳がん、腎臓がん、膀胱がんなどでもみられた。とあります。
ビタミンDは日光が生成に欠かせないとされていますがこれは間違っていないと思います。現代人は日光を浴びる機会が少ないことも、ビタミンD不足の一つの要因かもしれません。
ビタミンEは抗不妊作用、抗酸化作用、血行促進や動脈硬化などを抑制してくれる栄養素です。また不飽和脂肪酸を吸収し解毒剤としても機能する効果があります。
貧血は鉄分だけでなくビタミンEも改善に必要です。またビタミンAやビタミンCを共に摂取することで吸収率が増し、効果的になります。
ビタミンEは一種類だけではありません。実際には8種類あって、トコフェロールとトコトリエノールがあり、それぞれ、α・β・γ・δに分かれて、計8種類です。このうちdα型が最も人体に有効ということ宣伝されています。ビタミンEについてはビタミンCと同じかそれ以上に天然と合成を見極めることが必要です。
ごく簡単にいうと合成ビタミンEは光学異性体になるので、そもそも持っている作用自体が違うということです。だから表示をしっかり見る必要があります。しかし逆に言うと日本ではその表示がいい加減です。ラベルに「天然型ビタミンE」と書かれてあっても、天然素材から作られたものとは限りません。
*NPO法人 薬害研究センター 理事長、Tokyo DD Clinic 院長、NPO法人 薬害研究センター 理事長
組織にあるビタミンCがその効果を発揮するには、還元型であることが大切であり、常に「還元型>酸化型」を維持しておく必要があります。
ところが酸化型ビタミンCが多くなると、その効果は発揮されず、かえってラジカル反応が連鎖的になってしまうかもしれません。
一般に、活性酸素は細胞膜やミトコンドリア外膜そして核膜などを標的に、それぞれの膜にあるリン脂質を酸化させます。
しかし、基本的に膜には抗酸化物質が点在しているため、これによって脂質過酸化の連鎖反応はストップできます。
脂質過酸化にまず反応するのはビタミンEです。
膜の脂質二重層の少し内側にある疎水部にビタミンEが存在しているからです。
ビタミンE(還元型)は、酸化した脂質(ペルオキシルラジカル)に、電子と水素を供与して安定させます。
ただし、このときビタミンE自身がラジカル(酸化型)になります。
※酸化型といっても、ビタミンEの場合、反応性は低いため他の脂質に酸化反応を及ぼすことはほとんどありません。
酸化型ビタミンEは、親水部にいるビタミンCから電子をもらい、再び還元型に戻ります。
一方、ビタミンCは酸化型となってしまいますが、ここで活躍するのがグルタチオン(GSH)という酵素です。
グルタチオンは酸化型となったビタミンCを還元型に戻す働きをします。
そして、このグルタチオンを触媒するのがグルタチオンペルオキシダーゼという酵素です。
このグルタチオンペルオキシダーゼは、活性中心にセレンというミネラルを持ち、さらにビタミンB2を補酵素にもつ酵素です。
つまり、間接的にセレンが酸化物質を還元するといえます。
さらに、酸化型グルタチオン(GSSG)は、NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 )という、ナイアシン(ビタミンB3)によって生合成された物質に還元されます。
よって、細胞内ビタミンCを「還元型>酸化型」に維持するには、酸化型ビタミンCを還元型に戻す、グルタチオン、セレン、ビタミンB2、ナイアシンなどの栄養素が必須となるのです。
また、風邪を引いた時などには、白血球は多くの活性酸素をばらまくため、膨大なビタミンCが酸化型になります。
この場合は、先述の抗酸化栄養素では足りないため、手っ取り早く、還元型のビタミンCを服用するのがいいでしょう。
そのため、風邪にはビタミンCと呼ばれます。
さて、ビタミンEについても、これを活性化させるには還元型を維持することが最善策なのですが、先述のように最終的にグルタチオンに依存しますので、この触媒をするセレンがきちんと細胞内に留まっておくことが必須です。
そのため、ビタミンEはセレン摂取で相乗的な効果を発揮すると言われています。
ちなみに、セレンとビタミンEの作用はとても類似していることが多いです。
どちらも抗炎症作用や抗酸化作用があります。
ビタミンEだけでは特に大量投与でない限りほとんど抗炎症効果がないのに、セレンと組み合わせると抗炎症活性を大きく増大させます。
また、ビタミンE欠乏による肝臓の変性壊死があっても、セレンの経口投与で予防できたという報告もあります。
これは酸化型のビタミンEを還元型に戻すのが最終的にセレンに依存した酵素ということも機序としてあるのでしょう。
こうして、結果的にビタミンEはセレンと相性のいい栄養素といえます。
こうした抗酸化システムには細胞内にしっかりと栄養素が届いていることが肝なのです。