trans fat
トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸と同じく、体内で良くない作用をすることが知られている不飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸と同じくらい悪玉コレステロールを増加させ、ついでに善玉コレステロールを減らす。これによって虚血性心疾患の原因になります。(オランダの研究で明らかになった)
アメリカのハーバード大学も1970年代から研究を続け、トランス脂肪酸を摂っていると、場合によっては50%も心臓病になる確率が高まると結論づけています。
トランス脂肪酸というのは自然界にも存在しますが、問題になっているのは人間が作り出した人工トランス脂肪酸の方です。
リノール酸など常温で液体の不飽和脂肪酸に、水素を添加して固形の油脂を製造するとき出来る副産物がそうです。
なぜ水素を添加するのかというと、マーガリン・ファットスプレッドやショートニングを作るためです。マーガリンというのはバターの代用に、よりコストをおさえて安く製造販売するのを目的に生み出されたものです。ショートニングも同じ理由です。
人工的な副産物ですからタダのように安い。なので、コストを優先する巨大飲食産業で好んで使われています。
マーガリンやショートニングを使った加工食品はもとより、マヨネーズ、ポテトチップス、フレンチフライ、チキンナゲッツ、菓子パン、ケーキ、クラッカー、ドーナッツ、ミルクビスケット、各種フライ、キリがないくらいです。
ところが前述のように各国の研究によって【狂った脂肪酸】であることが確実になりました。WHOの再三の警告もあり、各国はトランス脂肪酸を厳しく規制するようになりました。
しかし、「添加物超大国」である日本国だけは特に規制をしていません。
お役人によれば「日本のトランス脂肪酸平均摂取量は日本独自の食文化もあって外国より少ないから」だそうです。
厚労省というところは、とにかく消費者のことはまったく考えていない事が分かりますね。
日本独自の食文化どころか、今や若者を中心に西洋を上回るほどの「ジャンクフードの食文化」になっている現実は完全に無視というわけです。日本マクドナルドなどの存在を知らないとでもいうのでしょうか。
ところで、このトランス脂肪酸は、心臓疾患だけではなく、脳に大きな影響を与えて認知症のリスクになることも分かっています。
食べ物から摂取したトランス脂肪酸は、一応「脂肪酸」ですので割と簡単に脳にもぐり込みます。
脳の思考回路では、DHAが非常に重要な仕事をしていますが、トランス脂肪酸はこのDHAの作業を邪魔して思考プロセスを混乱させるのです。
DHAだけでなく、γリノレン酸やプロスタグランジンの妨害もします。サウスカロライナ医科大学によると、こうした妨害によって「脳が重大なダメージを受けているのは確実」だそうです。
今や、アメリカや欧州では「トランス脂肪酸により心臓病とアルツハイマー病が増加している」というのは常識です。
とうとう飲食産業大手も自主規制を始め、トランス脂肪酸から距離を置くと発表する企業が増えています。しかし、日本の企業はまだまだ鈍く、そういう発表をした企業は極めて少数。
あれだけ低コストの「あぶら」はなかなか手放せないのでしょうね。日本国内では批判の声も少ないし、使える間は使い続けるつもりでいるのでしょう。
健康寿命を願うのでしたら、ファストフードとは適切な距離をおいた方がよいと思いますよ。