ガン治療に関して2つの風景がある。
一つは、恐ろしいガン細胞を攻撃し、徹底的に殺戮しようとする戦争の風景。
そしてもう一つは、がんの発生原因理由に思いを馳せ、癌の存在基盤を消し去ろうとする「平和回帰の風景」
しかし、今癌治療の世界で見られるのは、圧倒的に「戦争の風景」だ。
癌は怖い、癌は悪魔だ、癌をそのまま放っておいたら殺されてしまう。
その不安と恐怖が、医師も患者も、そして家族たちをも癌との戦いにかきたてられているからである。
戦争の風景から見えてくる癌治療は、暗い闇夜に出没するテロリストに怯えながら、テロ集団(癌細胞)を一刻も早く見つけ出し(早期発見)、
敵の勢力が、大きくならないうちに、そして、敵が他の場所に移動拡散(転移)しないうちに、総攻撃して殲滅せよ!
それが「戦場」での思考と行動の原理原則になっているのである。
これに対して「平和回帰」の世界では、なぜ彼ら(癌細胞)が登場して来たのか、そのことを根源に立ち返って考える。
というのも彼ら(癌細胞)は決して外から進入してきたテロリストではなく、もともと体内にあった細胞が、なんらかの原因で異常化(癌細胞化)したにすぎないからだ。
健康な細胞を癌化させたその原因とは何か、何がその異常化を引き起こせたのか、そう考えると、癌細胞をやっつけても意味がない。
テロとの戦争に突入していくのではなく、むしろ彼らがテロ行為を止め、自らテロ組織を解体してくれる環境に変えていくことこそが大事であると考えるのだ。
「戦場の風景」には、猜疑心や疑心暗鬼から発生する不安と恐怖のおどおどろしい空気が満ち満ちているが、
「平和回帰の風景」にはそれがない。
そこでは「癌細胞も自分の一部」と考えて、その異常化した心身の環境風土を平和的に考えていこうと出直すのである。