脂肪は必要な組織であり、適量であればアディポネクチンという善玉の長寿ホルモンを分泌します。
ところが、過剰になると炎症を起こしてしまい、そこからインスリン抵抗性に陥りやすくなります。
つまり、脂肪=悪ではなく、過剰な脂肪が悪なのです。
そして、日本人の成人の多くが、特に内臓脂肪の蓄積が多いと言えます。
内臓脂肪の蓄積は皮下脂肪の蓄積と比べると、慢性炎症の状態になりやすい性質があります。
本来、脂肪細胞の役割と言えば、余剰なエネルギーを中性脂肪として貯蔵することですが、生体の病態によって、活発的に生理活性物質(アディポカイン)を血液に放出して、全身の免疫や代謝をコントロールする働きもあります。
では、なぜ過剰な脂肪は炎症性物質を分泌するようになるのでしょうか。
それは、内臓脂肪の蓄積により、脂肪組織がMCP-1という、マクロファージ浸潤を誘導するタンパク質を産生させてしまうことがきっかとなり、それによって慢性的な炎症が持続するからです。
内臓脂肪の蓄積過剰によって、単球(=マクロファージの前身)が呼ばれ、この単球は脂肪組織に浸潤(=しみこんで広がっていくこと)し、ついに単球はマクロファージへと分化(変化)していきます。
そして、このマクロファージの一部が、脂肪組織に「融合」するのです。
こうして、過剰な脂肪組織とマクロファージのハイブリッド型である多核巨細胞ができあがり、マクロファージの炎症性が引き金となっていくわけです。
多核巨細胞は、核の数が40個にも達することがある病的な細胞として考えられています。
ちなみに、この機序は転移性がんと性質が似ていますね。(詳しくはこちらを参照に。https://goo.gl/YFW6tF)
マクロファージの浸潤により、TNFα(腫瘍壊死因子)、IL-6(インターロイキン6)、レジスチンといった炎症性のいわゆる悪玉アディポカインが顕著に増加していきます。
これらは血中に放出され、持続的に肝臓や骨格筋に届くことで、インスリン抵抗性を誘導することがわかっています。
さらには、糖を輸送するGLUT4や、インスリン感受性をよくするPPARγなどの発現を減少させます。
最後に、皮下脂肪に比べて、内臓脂肪の蓄積がインスリン抵抗性に大きくかかわっているのは、
①内臓脂肪の方が合成&分解ともに活発であること、
②内臓脂肪の方が門脈の上流(最初)に位置しているため高濃度の悪玉アディポカインが直接肝臓などに流入していること、などが挙げられます。
以上まとめると、インスリン抵抗性の原因の一つに内臓脂肪の過剰な蓄積が上げられ、脂肪組織から炎症性物質が分泌されるのはマクロファージが関わっていること、皮下脂肪よりも内臓脂肪の方がインスリン抵抗性を起こしやすいこと、などがわかっています。
慢性炎症を予防するには、まずは過剰な内臓の脂肪を落とすことから始まります。
そのために、日頃からの食事や生活習慣の改善が必要となってくるのです。
特に現代人に多い脂肪肝に気をつけましょう。(血液検査等でわかります。)