ごまは漢字で胡麻と書きますが、なぜ「麻」がつくのでしょう。
まず、「胡」という字は、中国の西や北にある地方のことを指します。
胡瓜(きゅうり)は胡の国から来た瓜、胡椒(こしょう)は胡の国から来た山椒、胡桃(くるみ)は胡の国から来た桃に類似した果実というのがそれぞれの由来です。
そして胡麻は、胡の国から来た麻に類似した種子が由来です。
日本では仏教が普及されてから肉食回避の食生活が中心でした。
その中でタンパク源を大豆などの植物性タンパクに頼ることがありました。
実際に大豆たんぱくは植物性にしては必須アミノ酸の組成がよく、特にリジンが多いのが特徴です。
一方で弱点といえば、メチオニン量がやや少ないことです。
このように大豆たんぱくは必須アミノ酸をなんとか補えるものの、どうしても不足してしまうのがメチオニンという必須アミノ酸です。
そこで、この大豆たんぱくでは不足してしまうメチオニンを補給したのが、ごまでした。
※これは経験的に得たものなのか、偶然なのかわかりません。
また、実際にひえ、あわ、きびなどの雑穀類が主流だったために、大豆・ごまが庶民にまで行き渡ったかは正直疑問ではありますが、この栄養バランスにはいつも驚かされます。
庶民に本格的に普及され始めたのは江戸時代と言われれています。
ごまのたんぱく質は、メチオニンやシスチンの含有量が多いのが特徴です。
生物学上、ごまは発芽するために必要なエネルギーを主に「脂質」に頼り、タンパク質も使用します。
一方、米や麦は、胚から発芽させるのに、胚乳に貯蔵された「炭水化物」をエネルギーとして使用します。
脂質は炭水化物よりも大きなエネルギーを供給できますので、少量で発芽させることができます。
こういうことから、ごまは米や麦などの炭水化物食品に比べ大きさが小さいのです。
ごまはそのままでは消化吸収できませんので、磨り潰すことで、良質な脂質やそのほかの栄養素を取得していました。
さらに、ごまに含まれるゴマリグナンには活性酸素を消去する力があります。
活性酸素の発生地の一つである「肝臓」には、このゴマリグナンは到達でき、抗酸化作用を発揮します(※抗酸化物質の中には肝臓まで届かないものが多く存在する)。
そして、カルシウムも豊富に含まれており、このような特性から当時の貴重な食料であり、薬としても活用されていました。
有史以前の縄文時代には既にごまを食べていたと言われています。
いまではごまの力を借りなくても、他の食材から必要な栄養は取得できていますが、上手に料理に取り入れて、食卓に並べてみるのもいいでしょう。