同じキノコの仲間でも硬質のものには、しいたけやシメジ、エノキなどの軟質のものとは違った、特別の効能をもったものが多い。
すなわち、霊芝(れいし)、木耳(もくじ)、サルノコシカケなどの大変に硬い質のキノコ類で、いずれも知る人ぞ知る抗ガン・不老長寿薬なのである。
霊芝、サルノコシカケは高価だが、木耳は安価で、水に戻せば軟らかくおいしくもあるので積極的に活用したい。
木耳、すなわちきくらげである。
本家の中国では、形が耳に似ているところから木耳と呼ばれ我が国では、歯当たりのシコシコしたところが水クラゲに似ているところから木のクラゲと呼ぶようになったのである。
このきくらげの成分組成は、7割以上がミネラル、1割が粗蛋白というきわめてユニークなもの。
きくらげは多様な薬効を持っているが、そのすべてに、ミネラル補給が裏づけになっていると考えてよい。
特にカルシウムが多いから、カルシウムの不足しがちな日本人は毎食事に食べていいぐらいのものだ。
きくらげの粗蛋白は、水分を吸うと、ネットリとした粘液質になる。すなわち、植物性のニカワ質蛋白質なのである。このニカワ質には、めざましい止血作用と養肌(ようき)作用がある。
止血作用をあらわすのは血管外に出た血液を素早く凝血させる働きがあるため。
その効果は大変なもので、消化管や痔に出血が起こった場合は、きくらげと黒砂糖を煎じて飲むとすぐに出血が止まるほどだ。
昔から、きくらげが、結核、胃潰瘍、痔の特効食品として利用されてきたのもこのためである。
養肌作用をあらわす理由の一つは、肌に適当な水分を保つ働きがあるため。
だから、肌が枯れてシワができて困る人はせいぜい利用するとよい。また養肌作用をより強力に支えているのは、一種の性ホルモン的な作用だ。
きくらげは婦人科の妙薬で、貧血、産後の体力回復、こしけなどに著効を表す。女性特有の機能を健全化する薬理作用が、同時に、女性らしい水水しい肌を生み出す
のである。
もちろん、きくらげは男性にとってもありがたい食品。
ヌルヌルしたものは男性のセックスを強くする作用を持つといわれている。
それはともかくとして、ミネラルと粗蛋白がたっぷり含まれているから、大いに強壮・強精効果は期待できるものだ。
なお、白きくらげもあって、これは深山の老朽木に生ずるもので、強壮・不老食といわれている。
昔の中国の金持ちたちは、大金を払ってこの白きくらげを常食したそうだ。
日本でも市販されているが、かなり高価で、色・形・歯ざわりなどいかにも上品だ。しかし、薬効的にはふつうの黒いきくらげもほとんど変わりがないからこれを活用すればよい。
■麩(ふ)ときくらげの白和え
材料(4人分)
・庄内麩・・・1枚
・きくらげ・・・10g
・だし汁・・・1/3カップ
・しょう油・・・小さじ2
・みりん・・・小さじ2
・油・・・大さじ1/2
・自然塩・・・小さじ1/2
・自然酒・・・大さじ1/2
・豆腐・・・1/2丁
・白ごま・・・大さじ1と1/2
<作り方>
①麩はぬれぶきんで包み、湿らせてから細く切り、だし汁としょう油みりん小さじ1杯で薄味をつけます。
きくらげは、戻して石づきを取り、油で炒め、小さじ4分の1杯弱の塩と自然酒で下味をつけます。
②豆腐は水切りをして熱湯にくぐらせて付近で十分水気を取っておきます。
③白ごまを炒り、ていねいにすり、②の豆腐を入れて、さらによくすります。
みりん小さじ2杯と小さじ3分の1弱の塩で調味します。
④ ①の麩ときくらげを③に入れて和えます。
庄内麩はぬれぶきんに包み、ていねいに扱いませんと、くずれてきれいに出来上がりませんので注意してください。